相続時精算課税制度の基礎知識
2.住宅取得等資金にかかる相続時精算課税制度
b住宅取得等資金にかかる相続時精算課税制度は、親から満20歳以上の子供へ自宅の取得資金を贈与した場合に適用があります。
b3,500万円までの資金の贈与には贈与税がかからず、それを超える部分の金額に対しては一律20%の贈与税がかかります。
bこの制度の適用を受けた贈与財産は、贈与者の相続時に相続財産として加算して相続税額を計算し、贈与時に納めた贈与税額があるときは、これを相続税額から控除して精算します。
制度のあらまし
一般の相続時精算課税制度は、財産の種類や資金使途を問わない贈与ですが、資金使途を住宅の取得や増改築に限定した贈与にも相続時精算課税制度があります。これを、住宅取得等資金にかかる相続時精算課税制度といいます。
この制度は、親(年齢制限なし)から満20歳以上の子供へ自宅の取得資金を贈与する場合には、3,500万円までは贈与税がかからず、それを超える部分の金額に対して、一律20%の税率で贈与税が課税され、その贈与した財産の価額は、贈与をした親の相続時に相続財産として持ち戻し(加算)をして相続税額を計算し、その際に納めた贈与税額があるときは、これを精算(相続税額から控除)して課税するという制度です。なお、この制度は、今のところ、平成15年1月1日から平成17年12月31日までの期間に限定されています。
親から20歳以上の子供に贈与した場合
〔贈与税〕
特別控除
(4,000万円−3,500万円)×20%
=100万円
〔相続税〕
相続財産とこの制度により贈与した財産を合計して相続税額を計算し、その税額からすでに納めた贈与税額を差し引き、納めるべき相続税額を求めます。
大枠は、一般の相続時精算課税制度と同じですが、贈与財産が特定され、かつ、贈与財産の使途が限定されているなどの制約がある半面、贈与者の年齢制限がない、また特別控除額が3,500万円(1,000万円+2,500万円)認められているなどの違いがあります。
適用対象者
この制度の対象となる人は、次のとおりです。
贈与者 親
受贈者 満20歳以上の子(推定相続人)
親には、一般の相続時精算課税制度のような年齢制限がありませんので、満65歳以上でなくても贈与できますが、受贈者には、一般の相続時精算課税制度同様、満20歳以上という年齢制限がありますので注意が必要です。
制度の対象となる財産
この制度は、次の要件を満たす住宅を取得するための資金及び増改築するための資金を贈与する場合に適用が認められます。
したがって、これらに使われない資金の贈与であったり、これらの要件に合致しない住宅を取得等するための贈与である場合には、この制度の適用が受けられませんので十分注意してください。
ク 取得、建築する場合
イ.新築又は築後経過年数が20年以内(一定の耐火建築物である場合は25年以内)であること
ロ.家屋の床面積(区分所有の場合は、その区分所有する部分の床面積)が50u以上であること
ハ.その家屋の床面積の以上がもっぱら居住の用に供されていること
ニ.居住の用に供する家屋が2以上ある場合には、これらの家屋のうち主として居住の用に供すると認められる一つの家屋
ホ.その他、一定の要件を満たすもの
ケ 増改築の場合
自宅の増築、改築、大規模な修繕、模様替え、その他の工事で次の要件を満たすもの
イ.増改築の工事費用が、100万円以上であること
ロ.増改築後の家屋の床面積(区分所有の場合は、その区分所有する部分の床面積)が50u以上であること
ハ.その他、一定の要件を満たすもの
コ 土地部分の取扱い
クやケの取得、増改築等と同時に取得する土地等も対象となります。
贈与税・相続税の計算方法
ク 贈与税
この制度は、住宅取得等の資金の贈与のうち3,500万円までは贈与税がかかりませんが、それを超える部分の金額に対しては、一律20%の税率で贈与税がかかります。この場合の贈与税額は、次の算式で求めます。
その年中におけるその贈与者からの贈与財産の価額
+前年までのその贈与者からの贈与財産の合計額−特別控除
3,500万円×20%=贈与税額
ケ 相続税
この制度にかかる贈与者が亡くなった場合は、受贈者については、この制度の適用を受けた贈与財産の価額(贈与を受けたときの価額)を相続税の課税価格に加算します。また、この制度によって贈与税を納めているときは、その納めた贈与税額相当額を、贈与者にかかる相続税額から控除します。
適用のための手続
ク 選択届出書の提出
この制度の適用を受けようとする受贈者は、その選択をしようとする最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、納税地の所轄税務署長に対して、選択届出書を提出しなければなりません。
ケ 贈与税の申告書の提出
また、この制度適用の贈与を受ける場合には、たとえその年の贈与税額がゼロであっても、贈与税の(期限内)申告書を提出しなければなりません。
選択届出書の届出もなく、また、申告書の提出もない場合は、通常の贈与があったものとして贈与税が課税されることになります。また、この場合には無申告加算税や延滞税も課税されますので注意してください。
なお、納めるべき贈与税額は申告期限までに納付します。
従来の住宅取得資金等の贈与の特例との適用関係
従来の住宅取得資金等の贈与の特例の適用を平成15年1月1日以後に受けた人は、その贈与を受けた年以後5年間は、その贈与にかかる贈与者からの贈与については、この制度の選択をすることができないとされています。
したがって、例えば父親から従来の住宅取得資金等の贈与の特例の適用を受けた場合には、5年間はこの制度を受けることができず、6年目以降の贈与でなければこの制度の適用を受けることができません。
ただし、この取扱いは、平成15年1月1日以後に従来の住宅取得資金等の贈与を受けた場合の取扱いですから、平成14年12月31日までに従来の住宅取得資金等の贈与の特例を受けている場合は、いつでも、この制度の適用を受けることができます。
また、この制度は、贈与者ごと、また受贈者ごとに選択適用ができますので、例えば父親からの贈与にはこの制度を受け、母親からの贈与には従来の住宅取得資金等の贈与の特例を受けるといったこともできます。
一般の相続時精算課税制度とこの制度の特別控除の適用関係
ク この制度を使った後、一般の相続時精算課税制度を使う場合
この制度の特別控除(1,000万円)のうち使い残した特別控除は、住宅取得等資金の贈与として使わない限り切り捨てられますが、住宅取得等資金以外の贈与をする場合には、一般の相続時精算課税制度の特別控除2,500万円が使えます。なお、この場合、住宅取得等資金にかかる贈与者と受贈者が同一のときは、親の年齢が満65歳になっていなくても一般の相続時精算課税制度の適用が認められます。
ケ 一般の相続時精算課税制度を使った後、この制度を使う場合
一般の相続時精算課税制度で使い残した特別控除があるときは、その残りの特別控除はこの制度の特別控除(1,000万円)と合算して使うことができます。
コ 一般の相続時精算課税制度とこの制度の特別控除の併用
一般の相続時精算課税制度の特別控除額をまったく使っていなくてこの制度の適用を受ける場合には、この制度の特別控除額1,000万円のほかに、一般の制度の特別控除額2,500万円も使えます(合計3,500万円)が、住宅取得等資金の贈与で一般の制度の特別控除額2,500万円も使ってしまった場合には、その後に一般の制度の対象となる贈与をしても、その贈与については一般の制度の特別控除額2,500万円は使えません。つまり、一般の制度となる贈与と住宅取得等資金の贈与に重複して2,500万円の特別控除額が使えるわけではありませんので注意してください。
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