相続税の基礎知識
5.相続税の申告と納税
b相続税の申告書は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。
b相続税の申告書を提出した者は、申告書の提出期限までに、その申告書に記載した税額を納付しなければなりません。
b税金は原則として金銭納付ですが、相続税については特例的に、延納又は物納の制度が認められています。
相続税の申告書の提出期限と提出場所
ク 申告書の提出期限
相続税の申告書の提出期限は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内とされていますので、相続税の申告書を提出しなければならない者は、この期間内に相続税の申告書を提出しなければなりません。なお、相続税の申告書を提出しなければならない者が、この期間中に国内に住所及び居所を有しないこととなる場合には、住所及び居所を有しないこととなる日までに申告書を提出しなければなりません。
また、相続税の申告書を提出すべき者が、その申告書の提出期限前に申告書を提出しないで死亡した場合には、その者の相続人は、その死亡した者が提出すべきであった第1次相続にかかる申告書を、その死亡した者にかかる相続(第2次相続)の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内(その者がその期間内に国内に住所又は居所を有しないこととなる場合には、その日まで)に、死亡した者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
(提出期限)
申告書の提出期限
H16/2/15相続の開始があったことを知った日10か月H15 /4/15
なお、相続時精算課税適用者がすでに納めた贈与税額の還付を受けようとするときは、相続税の課税価格、還付税額その他一定の事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
ケ 申告書の提出場所
相続税の申告書は、被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署長に提出します。この場合において、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者が2人以上いるときは、その申告書の提出先の税務署長が同一であれば、共同して申告書を提出することができます。この場合には、同一の申告書に連署して申告することになります。
なお、申告書には、被相続人の死亡時の財産及び債務、その被相続人から相続又は遺贈により取得した財産又は承継した債務の各人ごとの明細、その他一定の事項を記載した明細書を添付しなければなりません。
相続税の納税方法
相続税の申告書を提出した者は、申告書の提出期限までに、その申告書に記載した税額を納付しなければなりません。申告期限までに納付しなかった場合には、遅れた期間に応じた延滞税が課せられるとともに、無申告加算税がかかります。
ク 延滞税
公定歩合により決まりますが、平成15年度については年4.1%(ただし、納期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以後の期間については年14.6%)
ケ 無申告加算税
本税の15%相当額(自主申告の場合は5%)
延納と物納
税金は、原則として金銭納付とされていますが、相続税については、相続又は遺贈によって取得した財産を課税所得としていることから、その財産内容によっては、金銭で一時納付することが困難な場合も考えられます。そこで、相続税法では、金銭納付が困難な場合に限り、延納や物納という特例的な納税方法が認められています。
ク 延納
イ.延納の許可を受ける要件
相続税の延納を受けるには、一定の事項を記載した申請書を提出し、延納の許可を受けなければなりません。許可を受けるための要件は、次のとおりです。
@ 納付すべき相続税額が10万円を超えていること
A 納税義務者について、納期限までに又は納付すべき日に金銭で納付することを困難にする事由があること
B担保を提供すること(延納税額が50万円未満で、かつ、延納期間が3年以下の場合は除きます)
C相続税の納期限までに延納申請書を提出すること(担保の提供を要する場合には、その提供に関する書類を添付します)
なお、相続税の延納は、金銭で納付することを困難とする金額を限度として認められますが、この場合の金銭で納付することを困難とする金額とは、納税義務者の有する現金及び預貯金の額からその者の職業及び生活の状況等に応じ、その生活及び職業の維持に通常必要と認められる限度の現金及び預貯金の額を控除した額を、その者の納付すべき税額から控除した残額の範囲内の金額とされています。
ロ.担保
延納の担保にできる財産は、次の財産とされていますが、この財産は相続又は遺贈により取得した財産でなければならないということはありません。したがって、本人のものであっても、他人のものであっても担保として提供することができます。
@国債及び地方債
A社債その他の有価証券で、税務署長が確実と認めるもの
B土地
C建物、立木及び船舶並びに飛行機、自動車、建設機械等で保険を付してあるもの
E税務署長が確実と認める保証人の保証
F金銭
ハ.延納期間及び延納にかかる利子税
延納は、相続財産の状況等に応じて、延納期間や延納にかかる利子税の割合が次のように定められています。
区分 分納税額 延納期間 利子税
(最長)
A
不動産等の価額が75%以上の場合
イ不動産等の価額に対応する税額(スロを除く)
ス計画伐採立木の価額が20%以上の場合の森林計画立木部分の税額
スその他の財産の価額に対応する税額
年賦均等額
年賦均等額と計画伐採立木の伐採の時期及び材積に応ずる年賦不均等額との選択
年賦均等額 20年 20年 10年
(40年)
年2.0 年0.6% 年3.0%
B
不動産等の価額が50%以上75%未満の場合
スイイ不動産等の価額に対応する税額(スロ及びスハを除く)
スロを緑地保全地区等内土地部分の税額
ス計画伐採立木の価額が20%以上の場合の森林計画立木部分の税額
スニその他の財産の価額に対応する税額
年賦均等額 年賦均等額 年賦均等額と計画伐採立木の伐採の時期及び材積に応ずる年賦不均等額との選択
年賦均等額
15 15年 20年(40年) 10年
年2.0% 年2.0% 年0.6% 年3.0%
C不動産等の価額が50%未満の場合
スイ立木の価額が30%を超える場合の立木の価額に対応する税額(スロを除く)
ス計画伐採立木の価額が20%以上の場合の森林計画立木部分の税額
スハその他の財産の価額に対応する税額(スニを除く)
スニ緑地保全地区等内土地部分の税額
同 上
年賦均等額と計画伐採立木の伐採の時期及び材積に応ずる年賦不均等額との選択
年賦均等額 年賦均等額
5年 5年 5年 5年
年2.6% 年0.6% 年3.3% 年2.3%
注1) 「延納期間」欄の(40年)は、特定森林計画立木部分の税額の延納最長期間です。
(注2) 利子税は平成15年分に適用される率です。
ケ 物納
イ.物納の許可を受ける要件
相続税の物納を受けるには、一定の事項を記載した申請書を提出し、物納の許可を受けなければなりません。許可を受けるための要件は、次のとおりです。
@ 納税義務者が相続税額を延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があること
なお、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があるかどうかは、貸付金の返還、退職金の給付の確定など納税義務者の近い将来において確実と認められる金銭の収入や事業用資産の購入など近い将来において確実と認められる臨時的な支出も考慮したうえで判定されます。
A 物納申請書を提出すること
ロ.物納できる財産
物納に充てることができる財産は、納税義務者の課税価格の計算の基礎となった財産又はその財産により取得した財産で次のものとされています(国内にあるものに限ります)。また、相続開始前3年以内の贈与財産で相続税の課税価格に加算された財産も物納することができます。
@国債及び地方債
A不動産(棚卸資産である不動産を含みます)及び船舶
B社債及び株式並びに証券投資信託又は貸付信託の受益証券
C動産
ただし、B又はDの財産を物納に充てることができる場合は、Bの財産については@及びAの財産、またCの財産については@、A及びBの財産で、納税義務者が物納申請の際、現に有するもののうち適当な価額のものがない場合に限られています。
ハ.物納できない財産
また、次のような財産は物納不適格財産となっていますので、物納に充てることはできません。
@ 質権、抵当権その他の担保権の目的となっている財産
A 所有権の帰属等について係争中の財産
B 共有財産(共有者全員が持分の全部を物納する場合を除きます)
C 譲渡制限がある株式又は出資証券
D 売却できる見込みのない有価証券
注:取引相場のない株式で次のようなものは、売却できる見込みのない有価証券に該当しないものとして取り扱われます。
1.株式発行会社について、@直近2期における総資本経常利益率、売上高経常利益率及び総資本回転率のいずれか2つの指標が「法人企業統計調査」における同業種の直近2か年度の平均比率を超えていること、A発行会社の直近2期における当期利益(税引後)がマイナスとなっていないこと、B発行会社の直近2期において配当可能利益があること、のいずれの要件も満たし、売払いが確実に見込まれるなど、経営内容等から収納が適当と認められる場合
2.物納後、その株式を買い受ける希望者がいることが確認できる場合
E 売却できる見込みのない次のような不動産
1.借地権者又は借地権の及ぶ範囲が明らかでない貸地
2.無道路地
3.借地権が伴わない建物
F 境界線が明確でない土地で、隣地地主から境界線に異議のない旨の了解が得られない土地
ニ.収納価額
物納財産の収納価額は、原則として、相続税の課税価格の計算の基礎となったその財産の価額とされています。ただし、収納の時までに、その財産の状況に著しい変化があった場合は、その収納の時の現況によって税務署長が収納価額を定めることができるとされています。
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