贈与税の基礎知識
1.贈与税の課税の仕組み
b贈与財産の範囲は、受贈者の住所や国籍などによって違います。
b贈与税の対象となる財産には、民法上の本来の財産のほか、税法上のみなし贈与財産も含まれます。
贈与税の納税義務者
贈与税の納税義務者は、贈与によって財産を取得した個人ですが、相続税と同様に、個人の住所がどこにあるかによって、次のように取り扱われます。
納税義務者の区分 贈与税の対象となる財産
@居住無制限納税義務者 取得したすべての財産
A制限納税義務者(Bに該当する者を除きます) 日本国内にある財産
B非居住無制限納税義務者 取得したすべての財産
注:居住無制限納税義務者、制限納税義務者、非居住無制限納税義務者の意義は、12ページを参照(準用)ください。
贈与税の対象となる財産・ならない財産
ク 贈与とは
贈与とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方がこれを受託することによって成立する契約のことをいいますが、次のような場合も贈与として取り扱われることとされています。
イ.不動産や株式等の名義変更があった場合において対価の授受がなされていないとき
ロ.他人名義で不動産や株式を取得した場合
また、次のような場合には、外見的な形式ではなく、その実質に従って判断されます。
ハ.親名義の不動産や株式などを子供に贈与したが、形式的には親子間の売買として名義変更した場合
ニ.親が新たに不動産や株式などを他の者から取得し、これを子供に贈与した場合において、登記上、子供が直接売買により取得した形式をとっているとき
ホ.妻又は子供が不動産や株式などを直接他の者から取得し、自分の財産としたときにおいて、その買入資金が夫又は親から出ている場合
ケ 贈与税の対象となる財産
贈与税の対象となる財産には、本来の贈与財産とみなし贈与財産があります。
イ.本来の贈与財産
本来の贈与財産には、金銭に見積もることのできる経済的価値のあるすべてのものが該当します(具体的には、13ページの相続税の本来の財産を参照ください)。
ロ.みなし贈与財産
また、次のような経済的利益についても、実質的に本来の贈与と変わらないことから、贈与税ではみなし贈与財産として贈与税の課税対象とされています。
@ 保険金受取人以外の者が保険料を負担していた生命保険金、損害保険金
生命保険契約の保険事故又は損害保険契約の保険事故の発生により保険金を受け取った者が、その契約にかかる保険料の全部又は一部を負担していない場合には、その保険事故が発生した時に、その保険金のうち保険金受取人以外の者が負担した保険料の金額に対応する部分は、相続税が課されるものを除き、保険料を負担した者から贈与によって取得したものとみなされます。
A 著しく低い対価で譲り受けた財産
財産の譲渡をする場合に、著しく低い価額で取引をしたときは、著しく低い対価で財産を譲り受けた者は、その財産を譲り受けたときに、その対価と財産の時価との差額に相当する金額を、その財産を譲渡した者から贈与によって取得したものとみなされます。
B 債務免除による利益
対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合には、これらの行為があった時に、その利益を受けた者が、その債務の免除、引受け又は弁済にかかる債務の金額に相当する金額を、免除等をした者から贈与によって取得したものとみなされます。
C 金銭の貸与等
親族間等で金銭の貸与があった場合において、次のような事実があるときは贈与があったものとして取り扱われます。
1.貸与等を受けた者に返済資力がない場合、又は資力が十分あり貸与を受ける必要がないにもかかわらず貸与を受けた場合
2.一応は貸借であっても、返済期限の定めがない場合、又はいわゆる出世払いとしている場合、ある時払いの催
促なしというような場合など、その返済が行われる可能性が極めて低く、実質的には贈与と変わらない場合
3.第三者からの貸借で、その債務者に資力又は返済能力がないために、実質的には保証人となった親族等がその借入金を返済しているような場合
D 同族会社に対する財産の無償提供等で株価が上昇した場合
同族会社の株式等の価額が、次の事由により増加した場合には、その株主が、その株式等の価額のうち増加した部分に相当する金額を、次のそれぞれに掲げる者から贈与により取得したものとみなされます。
1.会社に対して無償で財産の提供があった場合はその財産を提供した者
2.時価より著しく低い価額で現物出資があった場合はその現物出資をした者
3.対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合はその債務の免除、引受け又は弁済をした者
4.会社に対して時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合はその財産を譲渡した者
コ 財産を取得したとき
贈与財産をいつ取得したかということは、財産評価額や申告期限にも影響を及ぼし、非常に重要なことですが、これについては、次のように取り扱われることとされています。
イ.書面によるものは、その贈与契約の効力の発生の時(受贈者が財産を受け取り、自己のものとして管理運用したとき)
ロ.書面によらないものは、その贈与の履行のあった時(受贈者に贈与財産を引き渡したとき)、ただし、停止条件が付いているものについては、その条件が成就したとき
ハ.農地などの場合は、農地法の許可又は届出の効力の生じた日後に贈与があったと認められるものを除き、その許可のあった日又は届出の効力のあった日
ニ.所有権の移転の登記又は登録の目的となる財産で、贈与の日が明確でないものについては、特に反証のない限り、その登記又は登録があった時 なお、不動産や株式等の名義変更がなされた場合や他人名義で新たに不動産や株式等を取得した場合において、対価の授受が行われていないときは、原則として贈与があったものとして取り扱われます。
サ 贈与税の対象とならない財産
贈与税の対象とならない財産には、次のようなものがあります。
イ.法人からの贈与財産
法人から贈与を受けた財産は、贈与税の対象になりません(ただし、所得税の対象になります)。
ロ.生活費等
扶養義務者相互間で、生活費又は教育費に充てるため贈与した財産のうち、通常必要と認められる範囲のものは贈与税は課税されません。
ハ.心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
条例の規定により、地方公共団体が、精神又は身体に障害がある者に関し実施する共済制度で一定の定めに基づいて支給される給付金を受ける権利については、贈与税が課税されません。
ニ.香典など
個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品のうち、社会通念上相当と認められるものには贈与税が課税されません。
ホ.相続の年に被相続人から贈与を受けた財産
相続があった年に被相続人から贈与によって取得した財産は、贈与税の対象とはならず、相続税の対象となります(特定贈与財産(14ページ参照)は除きます)。ただし、相続を放棄した者など相続税が課税されない者には、贈与税が課税されます。
ヘ.特別障害者の信託受益権
特別障害者を受益者とする特別障害者扶養信託契約に基づき、金銭、有価証券その他の財産が信託されたときは、その信託受給権の価額のうち6,000万円までの金額は、贈与税が課税されません。
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